昨年末に公開されたドキュメンタリー映画『みらいのうた』は、THE YELLOW MONKEYのボーカル・吉井和哉にエリザベス宮地監督が3年以上にわたり密着した作品だ。
THE YELLOW MONKEYは言わずとしれた大人気ロックバンド。1988年の結成から一度の解散を挟み、2016年に再結成されてからは精力的にライブ活動を行っている。吉井が自身のミュージシャン人生の原点であるアーティスト・EROとの40年ぶりのセッションを行うという約束を追うために撮影をはじめるが、撮影開始直後に吉井の喉頭がんが発覚。大病を患うEROと共に、2人のロッカーは闘病しながら音楽と向き合っていく。
ミュージシャンに密着したドキュメンタリー作品は、基本的にファンに向けたものであることが多い。それが悪いというのではなく、そのミュージシャンがどんなことを考えながらライブをしているのか、どの様な想いで制作をしているのかを知りたいと思うことは当然だからだ。しかし本作はそのようなドキュメンタリー作品とは異なり、今生きている人間全てがメッセージを受け取れる。あまりにも「人生」を映し出しているからだ。
自己表現、夢、成功と失敗、そして病と死。この世に生まれた全ての人間が経験していくそれらの出来事。吉井とEROの2人、2人を囲む周りの人々とのやりとりがありのままに紡がれ、「人は何のために生きるのか」ということを考えざるを得ない内容となっている。吉井が思うように歌えず苦労する様子や、ギターを抱えることすら難しくなったEROの姿は観ていて辛いのだが、逆に、そうやって苦労してまで音楽活動を行うことが彼らにとっての何よりの希望であり、生きる目標なのであることに勇気をもらうのだ。
また、ミュージシャン・吉井和哉と人間・吉井和哉の表情の変化もとても魅力的で、ドキュメンタリー映画という表現方法の意義を大いに感じることが出来た。彼らにとっての「音楽」が自分にとって「何」なのか。観る者に人生について考えるきっかけを与えてくれる、未来に遺したい作品である。
授賞式典