JAPAN MOVIE CRITICS AWARD 第35回
日本映画批評家大賞
特設サイト

日本映画批評家大賞 公式サイトはこちら

JUNE 1 , 2026
At the Tokyo International Forum

アニメーション作品賞
選考理由 (批評家コメント)

 日本はいまや、世界も認めるアニメ大国だ。
 ただしもう少し目を凝らしてみると、人気漫画を映画化したものが興行収入を伸ばし、作家性の強いアートアニメーションをシネコンで観ることはほぼ無い。そういった意味で『ChaO』のキャラクターデザインは独創性が高く、近年の日本アニメーションでは挑戦作だった。
 劇中に登場するキャラクターにはハンプティ・ダンプティのような体型や、頭だけがやたら大きな人間もいる。更には青髭を生やした女性らしき人物、スタイルがやたらと良いのに顔が映らない看護師も描かれる。そこに目がいった瞬間、自分も含めて人間は外見が気になってしまう生き物なのかもしれないと気付かされた。

 そんな本作は、人魚姫をベースにして生まれた完全オリジナル脚本だ。人魚の王国のお姫さまチャオが人間の青年ステファンに恋をして結婚へと進むのだが、人魚族は人間界で安心しないと人魚の姿になれず魚のままという点が興味深い。しかもステファンは自分の研究の為に政略結婚に同意するものの、魚姿の彼女を愛せずにいる。それでもチャオは人間界に馴染もうと献身的に努力する。これについて現代的ではないと言う人もいるだろうが、好きな人に喜んでもらおうと努力するのは、恋する人の当たり前の行動ではないか。やがて本作は、ラブストーリーでありながら人間と海の生物との共存を問う物語に広がっていく。

 なにより素晴らしいのは、手描きへのこだわりが生んだ柔らかなタッチの世界観だ。総作画枚数は10万枚超、上海の街並みや部屋の内部などの描き方は絵画のようで、近年のアニメーション制作でのリアル志向とは逆に、本作は“アート”に振り切っている。
 そのくせアクションシーンでは、ジョン・ウー監督へのオマージュさながら白い鳩が飛び、シー社長のボディガードは『マトリックス』のエージェントのよう。さらに『ワイルド・スピード』のようなカーアクションまで登場する遊び心に歓喜しながら、大人だけでなく子供にも楽しめるアートアニメーションを生み出したSTUDIO 4℃が、万人ウケではなくアニメーションの表現力を信じた映画作りをしているのだと確信した。

(伊藤 さとり)
戻る
第35回 日本映画批評家大賞
授賞式典
チケットのご購入はこちら
日本映画批評家大賞とは