映画で社会問題を浮き彫りにする。
おおいに意味のあることだ。映画作家には描きたいテーマがあってほしいと個人的には願ってしまうし、映画を通して社会を知りたいという好奇心を刺激してほしいとも思っている。本作『火の華』の監督・小島央大の登場は、そんな私自身の脳内でスパークルした。
最初の出会いは長編映画一作目『JOINT』をユーロスペースで目にした時だ。主演は本作と同じ山本一賢。裏社会から足を洗おうとする半グレの困難さを暴力団の抗争と共に描いた作品で、そのスタイリッシュな色合いと構図に圧倒された。この新鋭監督の次のテーマはなんなのか。その期待をまったく裏切らなかったのが、山本が演じる元自衛官・東介のPTSDからの脱出を描く本作だった。
憲法第9条により自衛隊の海外活動は非戦闘地域に限られているが、イラクや南スーダンに派遣された際の日報に「戦闘」という文言があったという自衛隊日報問題から着想を得て、本作は生まれた。今まさに政府では憲法改正の動きが見られ、第9条に自衛隊明記を行おうとしている。そうなれば本作の冒頭で起こる出来事はより現実味を帯びる。だからこそ本作は、今観ることで日本の行く末を想像する映画になっている。
ただし映画の9割は、戦地ではなく平和な日本が舞台だ。しかし戦地で友人を失いPTSDに苦しむ東介の心には平穏はなかなか訪れない。そんな彼がある出会いから、人を撃ち殺す火薬を、人を喜ばせる花火に変える仕事に就くのだ。火薬を手で丸く包み、丸い器に詰め込んで、丁寧に丁寧に密閉していく。信頼のおける先輩と出会い、ひとりの女性の優しさに触れ、日常を取り戻そうとする男に、花火の打ち上げ音を爆破音としてフラッシュバックしなくなる日はいつ訪れるのか。
小島央大は、主人公はもちろん、彼を取り巻く人々の感情を見事に映像に焼き付け、正義を提示しようとする人々と、平和を提示しようとする人々を、まるで花火玉のように緻密に計算して本作を完成させた。共同企画・脚本を務めた山本一賢にも拍手を贈る。この着眼点と物語の運び方は彼らでしか出来なかっただろう。
授賞式典