JAPAN MOVIE CRITICS AWARD 第35回
日本映画批評家大賞
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JUNE 1 , 2026
At the Tokyo International Forum

新人女優賞(小森和子賞)
南琴奈
『ミーツ・ザ・ワールド』
南琴奈
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選考理由 (批評家コメント)

『ミーツ・ザ・ワールド』の冒頭のシーン。
 歌舞伎町の片隅で酔いつぶれ、うめき声を上げている腐女子の由嘉里(杉咲花)に、通りすがりのキャバ嬢・ライ(南琴奈)が「救急車を呼んだ方がいい感じ?」と声を掛ける。
 ソフトフォーカスのかかった映像に焦点が合うと、端正でありながらも子供っぽさを宿した顔が浮かび上がる。由嘉里はぼんやりとその顔を見つめ「キレイな人」とつぶやく。「私もこんな顔に生まれたかった」。するとライはこともなげに「この顔になりたかったら300万あればなれるよ」と言い、「300万あげる」と続ける。
 普通、こんなセリフを聞けば「大ぼら吹き」「あり得ない」とドン引きするところだが、いや、本気で言っているみたいと思わせるあたり、この女優の凄みがある。

 その後、この二人は共同生活を始めることになるのだが、メリハリの利いた杉咲の超絶演技を受け止め、常に一貫して低体温でオフビートな演技を続ける南琴奈に、いつのまにか引きずり込まれていく。曲者揃いの共演者たちとのからみでもその姿勢は変わらない。  ライ役のオーディション会場では、一瞬、南と目が合った杉咲のセリフが飛び、その様子が映画の中の二人の関係を見事に具現化していると、満場一致で南が抜擢されたというエピソードが残っている。

 ライの住む部屋はまるでゴミ屋敷。「こんな部屋に住んでいたら死んじゃいますよ」と気遣う由嘉里の言葉に対しライはサラッと「私、死ぬの」と受け流す。冗談? 本気? 南はその曖昧さを難なく体現し、優しさと絶望のあふれる歌舞伎町の住人を見事に演じきった。そこには全身全霊を込めて守りたくなる儚げな一人の女性の姿が浮かび上がる。
 これまでに南琴奈は『ちひろさん』『花まんま』等、数々の作品に顔を出していたが、この作品で一気にブレイク。たまたま運良く当たり役にめぐり逢えただけなのか、紛れもない実力か……これからの動向に期待が高まっている。

(島 敏光)
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