日本映画批評家大賞第29回受賞作品

批評家コメント

　何と気持ちのいい映画だろう。
まるで心に強めのマッサージでも受けているかのような、イタいけど気持ちのいい、そんな快感が脳内に押し寄せて来る。こんなヒロインは見たことがない。でも、どこかに居そう。ごく平凡な一人のＯＬが、恋に落ちたその瞬間から、想像を絶するメガトン級の片思いに突っ走る。
　
　原作は『空中庭園』（05）、『八日目の蝉』（11）、『紙の月』（14）等で映画ファンにも知られる角田光代の同名小説。監督は『サッドティー』（14）や『鬼灯さん家のアネキ』（14）などで、若者たちの一筋縄ではない恋心を巧みに掬い上げた今泉力哉。
　ヒロインのテルコを扮するのは岸井ゆきの。デリカシーと鈍感力の同居する唯一無二のキャラクターを見事なバランス感覚で演じ切っている。いわゆる美形とは少々ズレた顔立ち。突拍子もない行動の数々。最初は「どうしたものか」といぶかっていても、次第にこのヒロインが愛おしくてたまらなくなる。

　その一途な純愛を全く受け止めず、自分の都合だけでテルコを振り回すマモルに扮するのが、今や映画やテレビに引っぱりダコの成田凌。何の悪気もないだけになおさらタチが悪い。この男ならではのとらえどころのないキャラクターが見る者をイライラさせると同時に、ドラマに深みを与えていく。
　どんな映画でも、一途な片思いはどこかで必ず報われるものだが、この映画ではそうはいかない。ありきたりなハッピーエンドへの道は封鎖され、テルコはただ一方通行のデコボコ道を全力で疾走する。それが原因で会社をクビになっても、そんなことは気にも止めない。原作に底力があるため、非常識で型破りなキャラクターがスクリーンをイキイキと動き廻る。
　２人を囲む新世代の実力派（深川麻衣、若葉竜也）、さらにはマモルの彼女に扮した名女優の江口のりこが絶妙なアンサンブルを作り上げている。
　その個性豊かな出演者たちが一同に会して、オフビートなクライマックスがやって来る。

　原作よし、監督よし、役者よし。日本映画の未来は明るい！　　　（島敏光）

批評家コメント

　『殺さない彼と死なない彼女』（小林啓一監督）で高校生・小坂れいを演じた主演の間宮祥太朗は、その圧倒的な存在感、変幻自在の表現力、観客を物語に誘う吸引力、すべての点において俳優としての魅力が開花していた。第29回日本映画批評家大賞・主演男優賞選考会において、満場一致の結果であった。

　間宮祥太朗は、1993年6月11日、神奈川県に生まれる。中学時代に読者モデルとして芸能界入りを果たした後に、当時の人気ドラマ「スクラップ・ティーチャー教師再生」（08、NTV）で俳優デビューを飾った。その後、数々の現場を経験した後、テレビドラマ「ニーチェ先生」（16、YTV）で初主演を務め、翌年の小林勇貴監督による映画『全員死刑』（17）では映画初主演を果たした。2018年には、永野芽郁主演の連続テレビ小説「半分、青い。」（NHK）で幅広い年代から注目を集め、全国区の俳優に成長。

　また、その間にも主な映画出演作として『希望の国』(12・園子温監督)、『高台家の人々』(16・土方政人監督)、『闇金ウシジマくんザ・ファイナル』(16・山口雅俊監督)、『帝一の國』(17・永井聡監督)、『お前はまだグンマを知らない』(17・水野格監督)、『トリガール！』(17・英勉監督)、『不能犯』(18・白石晃士監督)、『食べる女』(18・生野慈朗監督)、『翔んで埼玉』(19・武内英樹監督)、『ホットギミックガールミーツボーイ』(19・山戸結希監督)など、出演作は多数。名だたる監督たちのもとで印象に残る仕事をこなし、今回の主演男優賞の受賞に足る実力を磨いた。

　そしていま、未来への可能性に満ちた20代を駆け抜けている最中。現在は年齢的な役柄の幅こそ広くはないものの、キャラクターの内面を丁寧に表現することで　ワンパターンに陥らない努力を続けている。そのひたむきで、真摯な姿勢はスクリーンを通して観客を魅了しており、今後の日本映画界を背負う俳優になることは間違いない。　　　（大滝功）

批評家コメント

　“ミサミサ”として『デスノート』2部作で衝撃の銀幕デビューを飾ってはや14年、戸田恵梨香は誰もが認める演技派女優として成長した。2019年公開作品『あの日のオルガン』『最初の晩餐』、このたびの主演女優賞受賞は、選考委員一同、心よりお祝い申し上げたい。

　戸田恵梨香は、1988年生まれ、兵庫県出身。キャリア初期、テレビドラマで注目を浴び、前述の『デスノート』2部作（06・金子修介監督）で輝かしい映画デビューを果たした。以降「ライアーゲーム」シリーズ（CX）、「SPEC」シリーズ（TBS）、「コード・ブルー」シリーズ（CX）とシリーズものに恵まれ、記憶に新しいところでは2019年後期のNHK連続テレビ小説「スカーレット」のヒロイン役として話題を集めた。無論、映画の世界でも、『エイプリルフールズ』（15・石川淳一監督）、『駆込み女と駆出し男』（15・原田眞人監督）、『無限の住人』（17・三池崇史監督）など多数の作品に出演しており、名実ともに日本映画の女優である。

　『最初の晩餐』（常盤司郎監督・脚本）は、構想7年の渾身の脚本の元、豪華キャスト陣による見事なアンサンブルが高い評価を得た。戸田は、染谷将太演じる主人公・麟太郎姉・美也子役を務め、それまでのフィルモグラフィーにはない新たな表現力でキャラクターに命を吹き込み、女優としての成長を示した。

　『あの日のオルガン』（平松恵美子監督・脚本）は、時代も時代、1944年の日本が舞台。国の決定を待たずして、日本で初めて保育園を疎開させることにした保母たちの真実の物語で、戸田は保母たちのリーダーで責任感の強い板倉楓役を好演。幾多の困難を乗り越え、託された園児の命を守り抜こうとするヒロインたちの奮闘劇にリアリズムを与えた芝居は、全世代の映画ファンを魅了したに違いない。

　事実に即したヒューマンドラマからお茶の間の共感を得る作品、果てはファンタジックなエンターテインメント作品まで全ジャンル、垣根を自由に超えていく戸田恵梨香。今後も作品の中でさらなる飛躍を遂げるはずだ。　　　（大滝功）

批評家コメント

　『最初の晩餐』は、窪塚洋介が「良い俳優である」ことをしみじみと感じさせてくれる映画だ。変わった役や個性的な役が多かった彼にとって、初の父親役にして等身大ともいえる役。改めてこんなにも良い芝居をするのかと引き込まれる。彼が演じるのは、親の再婚で１つの家族になった東家の長男・シュン。父が亡くなったことで家族全員が揃い、通夜から葬儀までの現在の日々と、過去の想い出が交互に描かれていく。

　子供時代と大人時代、演じる俳優が異なるため、窪塚の演じる大人になったシュンが登場するのは後半から。出番は決して多くはないが、映画が始まって約１時間半後、窪塚の登場シーンにして15年ぶりに家族と再会する場面が印象的だ。そのシーンのセリフは「よお」のたったひと言だが、染谷将太の演じる次男・麟太郎、戸田恵梨香の演じる長女・美也子、斉藤由貴の演じる母・アキコ、そして永瀬正敏の演じる亡き父・日登志が、家族でありながらもワケあって疎遠になっていて、懐かしい再会であることを、そのひと言で説明してしまう見事な演技に感服する。ほかにも弱っていく父とのやりとりを映し出す回想シーンは、映画では描かれていない父との時間をも想像させるような、愛情が自然と滲み出る深い演技だった。

　窪塚の俳優デビューは1995年のドラマ「金田一少年の事件簿」（NTV）。その後、「池袋ウエストゲートパーク」（TBS）で火が付き、初主演映画『GO』（01）では人気も実力も一気に頂点を極め、『Laundry』『ピンポン』『凶気の桜』（02）、『魔界転生』（03）、3年間で５本の主演作、他２本の出演作が公開。
　映画と平行してドラマでも主演作が続いていたが、2003年以降は活躍の場を映画に絞る選択をした。現在までの主な出演映画は36作に及び、2017年にはマーティン・スコセッシ監督作『沈黙 -サイレンス-』でハリウッドデビュー。2019年制作の英国発のサスペンスドラマ「Giri／Haji」（Netflix）のメインキャストとして抜擢されるなど、世界にも活躍の場を広げている。また2020年の秋には『みをつくし料理帖』が控えているほか、エリザベス・バンクスとの共演作品『Rita Heyworth with a Hand Grenade』の話題作も待機中。

　40代に突入した窪塚洋介のこれからに益々期待する。　　　（新谷里映）

批評家コメント

　今年で26歳を迎える伊藤沙莉の芸歴は17年、これまでに出演した映画は24本、ドラマはおよそ50本。この数からも彼女の演技力が際立っていることは明らかだ。ここ数年の活躍は特に目ざましく、2017年から2019年の３年間は１年に４本ずつ映画に主演・出演している。
　2017年は『一週間フレンズ』『ブルーハーツが聴こえる』『THE LAST COP／ラストコップ』『獣道』。須賀健太とダブル主演した『獣道』では、宗教団体、ヤンキー一家、風俗の世界……、自分の居場所を探すヒロインのさまざまな表情を演じて高い評価を得た。また同年には連続テレビ小説「ひよっこ」にも出演、幅広い年代にその存在を知られるようになった。
　2018年は『blank 13』『パンとバスと2度目のハツコイ』『榎田貿易堂』『寝ても覚めても』、そして、2019年は『21世紀の女の子／projection』『ブルーアワーにぶっ飛ばす』『ペット２（日本語吹替版）』、『生理ちゃん』の４本だ。

　『生理ちゃん』はもともとコミックが原作で、実写化となるこの映画では、女性が毎月向きあう生理現象をピンクのキャラクター“生理ちゃん” として、なんともアナログな方法で登場させている。
　その具現化された“生理ちゃん”をいかにリアルに見せられるかは、俳優たちの演技が左右する。伊藤の演じるフリーター山本は、夢をあきらめ、SNSで毒を吐き続けるキャラクター。清掃員の仕事をしながら周囲の人たちに心のなかで鋭いツッコミを入れて、それを仕事の合間にもの凄いスピードでスマホに打ち込んでいく。
　その心の声の芝居がたまらなく面白く、そして上手い。彼女のハスキーボイスがとてもマッチしている役でもあった。さらに“生理ちゃん”と喧嘩をして仲直りをするシーンは、この映画で泣きそうになるなんて！と感動的シーンになっている。そんなふうに心が揺さぶられたのは、まぎれもなく伊藤の演技の高さによるものだ。

　シリアスからコメディまで何でも来い！の伊藤沙莉。2020年は『ステップ』と『劇場』の公開が控えているほか、東京国際映画祭2019の日本映画スプラッシュ部門で上映された主演作『タイトル、拒絶』の公開も待ち遠しい。目が離せない俳優の活躍は、ただただ嬉しい。　　　（新谷里映）

批評家コメント

　昨年の監督賞受賞者である白石和彌監督に続き、今年の監督賞も故・若松孝二監督の申し子だ。荒井監督は、若松プロダクションの助監督出身で、脚本家として『Wの悲劇』（84）や『大鹿村騒動記』（11）などで日本アカデミー賞優秀脚本賞を4度受賞している。一方で、季刊誌『映画芸術』の編集・発行人を務めていることでも知られる、日本映画界と映画批評界を支える一人でもある。

　そんな大物に対して若輩者の私が何かもの申すのは失礼にあたるのだが、『火口のふたり』の巧みなストーリーテリングには舌を巻いた。セリフ数が多いわけではないし、登場人物は2人だけ。しかも、昔の思い出を取り戻すかのように身体を交わし、特に事件が起きぬまま数日を過ごすだけの話。なのに、震災後の日本社会に巣くう病巣や、今を生きる人々の閉塞感を見事に表現しており、これ以上ないほどの描出力だ。僭越ながら、やはりいい本を書ける人は、監督しても素晴らしい、と感じた次第である。

　荒井監督は、現代社会の片隅に生きる人々を描く『幼な子われらに生まれ』（17）や『海を感じる時』（14）、『共喰い』（13）などの脚本の名著を世に送り出しながら、監督作は本作を含めて3作品。正直、もっともっと監督作を作ってほしいと切に願う日本映画界重鎮の一人。常に市井の人々の気持ちに寄り添った物語を編み出し、昨今常態化した「せりふに頼る映画」とは真逆の作品を送り出してきた。流行の映画とは全く違うのに、旬の俳優で旬のネタを取り上げ、旬の苦悩をすくいあげる。そもそも映画とはこういうものであり、観る者が受けとめる余白を大事にするものではないのか。

　その問題提起の意味でも、本作を監督作として完成させたことは意義深い。脚本家としての活躍はもちろん、いま日本映画界の閉塞感に苦しんでいる若手の監督たちの指標としての活躍を期待したい。　　　（よしひろまさみち）

批評家コメント

　石井裕也監督の『町田くんの世界』は、2019年を代表する邦画の1本であると言えるのではないだろうか。2009年にPFFスカラシップ作品として『川の底からこんにちは』が公開され、『舟を編む』（13）、『映画夜空はいつでも最高密度の青色だ』（17）など注目作品を次々に発表している石井監督が、新作映画にてほぼ演技経験の無い俳優を主演に起用したことは、映画ファンにとって楽しい驚きであった。

　1,000人以上のオーディションの中から選ばれたのは、細田佳央太と関水渚。特に細田佳央太は、「何も取り柄が無さそうに見えるけれど、人を愛する才能がずば抜けている」という、非常に繊細で難しい＜町田くん＞とう役柄を好演した。

　本作の原作はこれまた非常に面白い少女漫画なのだが、町田くんの純粋無垢なキャラクターを実写化した時に嘘くさくなる恐れもあったと思う。しかし、細田佳央太はフレッシュな魅力で見事に体現してくれた。先輩俳優たちが演じるキャラクターが町田くんの世界に触れた時のキラキラとした輝きや新鮮な戸惑いは、細田佳央太自身の魅力に通じる所があったのではないだろうか。

　ヒロイン・猪原奈々役を演じた関水渚のみずみずしい存在感も抜群で、接した人々の心を癒し、世界を変えてしまうストーリーそのままに、この映画を観た者の心を温めてくれた2人に心から感謝を贈りたい。　　　（中村梢）

批評家コメント

　「そこにいるだけで絵になる」－そう称される俳優はこれまでにも存在したし、これからも登場するだろう。しかし、モトーラ世理奈が持つ圧倒的な存在感を超える人はなかなか現れないのでは無いだろうか。
　2019年に『おいしい家族』（ふくだももこ監督）と『ブラック校則』（菅原伸太郎監督）の劇場公開作品2本に出演したモトーラ世理奈は女優だけでは無く、モデル、歌手としても活動している。2015年、雑誌『装苑』でのモデルデビュー以降、同誌専属モデル、資生堂企業文化誌『花椿』カバー、RADWINPSのジャケット写真に起用、パリコレ出演と現在21歳ながら、その軌跡は華々しい。スクリーン以外の場所で彼女の姿を目にした人も多いであろう。2018年には二階堂ふみが彼女を撮りおろした『月刊モトーラ世理奈・夏写真二階堂ふみ』が出版されるなど、実力派女優が一目置くほどの魅力を放つ存在なのである。

　ここまでその稀有な存在感について繰り返し伝えてきたが、筆者が感じるモトーラ世理奈の素晴らしさは「映画に自然に溶け込める」ことにある。唯一無二な魅力・存在感を持つゆえに、役柄は違っても全てが同じようなキャラクターになってしまう、というジレンマを持った俳優は少なくないと思う。しかし彼女の場合はそれぞれの役柄を身につけ、映画のストーリーを運ぶ役割をきちんと果たしている。

　映画デビュー作『少女邂逅』（18、枝優花監督）ではミステリアスで優しい少女を演じ、映画界に鮮烈な印象を残した。「自分の父親が男性と再婚する」という出来事から、都会で働く女性が自分らしさを取り戻していく新しい家族の物語『おいしい家族』では、生意気な女子高生を好演。実際に社会問題になっている「ブラック校則」をテーマにした『ブラック校則』では、生まれつきの栗色の髪の毛を黒く染めなくてはならないと教師に強要され、不登校気味になってしまう生徒を熱演した。

　彼女の生まれ持った美しさとその透明感から、ミステリアスであったり繊細な役柄が得意なのであろうと安易に想像してしまいがちだが、勝気であったり天真爛漫な少女であったり、見事に演じ分けているのだ。今後も次々と映画出演が決まっているモトーラ世理奈。次はどんな表情を見せてくれるのか、楽しみで仕方が無い。　　　（中村梢）

批評家コメント

　小説家としても小説デビュー作の『えん』（16）で第40回すばる文学賞佳作を受賞しているふくだももこ監督だが、長編デビュー作の『おいしい家族』では映画における多様性を見事に描き出し、その手腕を見せつけてくれた。
　『おいしい家族』は彼女自身が手がけた短編『父の結婚』（16）を長編化した作品。短編では妻を亡くした父が再婚するまでを、親子の視点で描いたが、本作ではそれにキャラクターをプラスし、娘の視点でさまざまな人々の家族観を深く掘り下げている。これが非常にうまい解釈だったことが、さすが今を生きる20代の発想力と感服した。

　まず、父が再婚する、というありきたりの家族物語を、セクシュアリティの多様性と国際社会の多様性に結びつけ、現代社会に即した内容に広げたこと。この視点は、これまでの日本映画界には欠けていたことだ。表向き、日本映画界を支えるベテランの監督の多くは、この手のテーマを取り上げ、それなりのヒットを打ち出す作品を作っている。だが、そのどれもが「何か足りない」のだ。それは、当事者目線。今の日本に暮らしているセクシュアル・マイノリティや外国人、なにかしらの偏見をもたれがちな人々がどのような気持ちで生活を営んでいるか、という視点が足りていない。いわばマジョリティから見たマイノリティ、という視点しか描かれていないところが残念しきり。

　ところが、ふくだ監督にはそれがある。久しぶりに帰郷した娘が、父が突然女性装で現れ、子連れの男性のパートナーと暮らしていた、という設定は、ともすると自爆する恐れがあるほど繊細なもの。だが、それを笑いに導くだけでなく、娘の葛藤、そして離島ならではの社会構成にまで踏み込んで、多様性ある理想的社会を描くことに成功している。メジャー長編初監督作にしてこの出来映えは、さすがは小説や脚本でも評価が高いストーリーテラーである。ますますの活躍を期待しての新人監督賞、今後の日本映画界を牽引する存在になってほしいと切に願う。　　　（よしひろまさみち）

批評家コメント

　Twitterに投稿した四コマ漫画が多くの読者の胸を打ち、熱狂的な支持を集める漫画家・世紀末の処女作にして代表作「殺さない彼と死なない彼女」を実写映画化した同名作品。間宮祥太朗、桜井日奈子をはじめとするフレッシュな役者陣による熱演と、小林啓一監督によるこだわりの演出で、SNSを中心に話題を呼び異例のロングランヒットを記録している。

　間宮演じる「殺す」が口癖でスマホ依存症の無気力少年・小坂れいと、桜井演じる「死にたい」が口癖の心優しきネガティブ少女・鹿野ななを中心に、不器用で純粋な男女3組を描いた本作は、テーマやキャスト陣を見るに、10代、20代前半向けの＜青春映画＞のようにとらわれがちだ。しかし、映画館を訪れリピーターとなったファンの中には30代、40代、それ以上の映画好きも多かった。原作、美術、音楽、演技と本作を輝かせる要素はたくさんあれど、映画好きを唸らせたのは小林啓一監督の演出と脚本であろう。

　「天気待ち・光待ち」の時間が多かったと出演陣が語っているとおり、すべて自然光にこだわって撮られた本作。暖かな夕日、日差しが翳る部屋、柔らかな朝の日差し。登場キャラクターたちの気持ちを代弁するかのような光が、物語全体を包み込む。全体的に感情を抑えた静かなセリフ回しが多く、派手に音楽などもならない本作において、この自然光がとても良い表情を見せてくれるのだ。

　小林啓一監督は、ハロー！プロジェクトのアイドルなど数々のMV、CM、ウェブドラマ等を制作し、2012年『ももいろそらを』で長編映画デビュー。第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で最優秀作品賞を受賞し、世界最大のインディーズ映画祭であるサンダンス映画祭でも評価を受けている。2017年に公開された『逆光の頃』では、監督・脚本に加え撮影を務め、『殺さない彼と死なない彼女』と同じくこだわりの光演出、カット割を見せている。若者の葛藤や悩み、複雑な心情を丁寧に紡ぎ、芸術性とエンターテイメント性を両立させている小林啓一監督。今後の活躍にますます期待が高まる。　　　（中村梢）

批評家コメント

　片山慎三監督の長編デビュー作となる『岬の兄妹』は、痛烈にして繊細で、個を描きながら社会背景が見えてくる、観る前には到底想像がつかない衝撃に打ちのめされる作品だ。
　主人公は、足の悪い兄と自閉症の妹。仕事を干されてしまった兄はある日、妹が体を許し金銭を受け取っていたことを知り、２人生きていくために売春の斡旋を始める。貧困、障害、性、犯罪、暴力を包み隠さず描いていることにまず衝撃を受け、悲劇を背負ったヒロインだと思っていた妹が、本当は何を感じていたのか、何を考えていたのかを知ることで、観客はより一層の衝撃を受け取ることになる。目を覆いたくなるような物語であることは間違いないのに、最後まで目をそらすことを許さない、釘付けにさせる、そんな凄い作品を片山監督は産み落とした。

　中村幻児監督主催の映像塾を卒業後、助監督としてスタートした場所は、ポン・ジュノ監督作品の現場──『TOKYO！＜シェイキング東京＞』（08）と『母なる証明』（09）だった。
　『岬の兄妹』の公開時には、ポン・ジュノ監督の「多くの論争を巻き起こす見事な傑作」というコメントを筆頭に、名だたる監督や映画人から「力強い」「衝撃」「心を鷲づかみにされる」など熱いメッセージが寄せられた。片山監督の実力が確かなものであることは証明済みだ。
　ほかにも助監督として、山下敦弘監督作『マイ・バック・ページ』（11）、『苦役列車』（12）、『味園ユニバース』（15）などで経験を積み、監督としてはドラマ「アカギ」第7話（15、BS-S）、太宰ミュージアムのショートムービー『ニンゲン、シッカク』（17）などを経て、2019年、２年以上を費やして完成させた初長編監督作『岬の兄妹』が公開。
　難しい題材を敢えてデビュー作に選んだことへの感動、そして兄妹を演じた松浦祐也と和田光沙のキャスティングにおいても、こんなに実力ある俳優が隠れていたのかと嬉しい発見をさせてくれた。

　長編デビュー作でこれだけ大きなインパクトを与えた片山慎三監督。この衝撃に満ちた『岬の兄妹』の後にどんな作品が続くのか、どんな作品で我々を感動させてくれるのか、大いに期待している。　　　（新谷里映）

批評家コメント

　「男はつらいよ　お帰り寅さん」「辛いことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べ・・・」。編集中に、何度寅さんの名を呼んだことでしょう。

　過去48作品の中から、新作の満男のその時の心情にそぐう場面を探し出し、切り取り、繋ぐように編み込んでいく。決して名場面の羅列になってはいけない。新しい映画の新しい意味を持たせて復活させなければいけない。
　その使命を受けての編集は、簡単なように思えてパズルのように意外と困難なものです。劇映画でありながら膨大な素材の中から話を紡いでいくドキュメンタリーの編集のようなものです。しかもドキュメンタリーとは違ってナレーションで場面を引っ張っていくものでもない。ドラマとともに進行していく感情の襞（ひだ）に合いの手を入れるように挟み込まれていかなければ作品を壊してしまう。

　石島一秀さんの編集にはそのような繊細な仕事の跡がうかがえる。しかも、過去48作品を編集した石井巌さんの積み上げた良さを壊してもいない。かと言って正直に受け継いでいるものでもなく、全く新しい見え方に繋ぎ切っている。

　上手く劇中の満男と感情の共有ができたのか、観終わった後には、われわれの胸の中にしっかりと寅さんが印象づいていることに気づかされる。その卓越した技術を高く評価します。　　　（日本映画批評家大賞機構事務局）

批評家コメント

　ドキュメンタリー映画とは、撮り始めたときには答えがないもの。だが、『i-新聞記者ドキュメント-』には、最初から答えがあった。日本の国難といってもいい、現政権の横暴に切り込もうとする東京新聞社記者・望月衣塑子を追ったものだからだ。彼女の名前は、TwitterなどのSNSでは非常に有名だし、彼女が「かみつく」取材の数々は悪目立ちしているともいっていいほど目立つ。だが、本作を観たあとで出る感情は「求めていた答えではない」ということ。
　
　森達也監督はそのときどきの「時の人物」を追ってきた。『A』（98、01）シリーズや『FAKE』（16）など、メディアで騒がれている人物に直接取材し、メディアに出てこなかった真実を暴き出している。本作でも、望月記者の取材に同行し、ジャーナリズムとは何か、を問う……と思いこんでいた。それが間違っていた。
　大ヒットしたフィクション映画の『新聞記者』（19）の裏側、ともいえる、権力vsジャーナリズムの素顔は、想像していたよりも深刻な対立があり、また想定以上の腐敗がある。望月記者は、同じ記者仲間から「スタンドプレイだ」と批判されることも多いのだが、果たしてそれがスタンドプレイなのか。そもそもお膳立てができあがっている場で、お約束の質疑応答をすることが新聞記者としての職責なのか。本作を観れば、その矛盾は明らかになる。

　望月記者を追いつつも、描き出されるものは望月記者のフェアプレーと、それに対して他の者が抱える思考のゆがみ。メディアとは、ジャーナリズムとは、という、まるで小学生か中学生の教科書のような基本の”キ”が何かを思い知らされる。
　このようなドキュメンタリーは、欧米では当たり前に作られ、当たり前に受けとめられ、そして当たり前に観賞した人それぞれが問題化し、社会の病巣をなんとかせねば、という問題提起になってきた。だが、今の日本はどうだ。これほど分かりやすいドキュメンタリー作品があっても、変わるどころか悪化する一方。長いものに巻かれることをヨシとし続けてきた、日本人の保守的な性質に見事なカツを入れているのだ。　　　（よしひろまさみち）

批評家コメント

　2019年公開のアニメ―ション作品の中で（失礼は承知で申し上げるが）最大のダークホースが、『映画すみっコぐらしとびだす絵本とひみつのコ』だったと言っても過言ではない。もともとはキッズ向けのキャラクターが主人公の、映画そのものも子どもたちをターゲットにしたものであるが、その高いメッセージ性は大人たちの心をも動かした。これをスルーしてこの先に進めないほど、映画界へのインパクトもあったのである。

　「すみっコぐらし」は2012年に、たれぱんだ、リラックマなどで知られるサンエックス株式会社から発売されたキャラクターのことである。
　『映画すみっコぐらしとびだす絵本とひみつのコ』では、ある日すみっコたちが、お気に入りのお店「喫茶すみっコ」の地下室で、古くなった一冊の飛び出す絵本を見つけるという出来事からストーリーが始まる。絵本を眺めていると、突然に仕掛けが動き出して、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。その絵本の世界で出会ったのは、どこからきたのか、自分が誰なのかもわからない、ひとりぼっちのひよこだった......。
　この程度の紹介では、この映画の中身は伝わらないだろう。観てびっくり、壮大なカタルシスを覚えるドラマチックな展開が待っていた。必見の作品である。

　余談だが、2018年は『カメラを止めるな！』がダークホース的な作品で、SNSを介して爆発的な人気を獲得した。本作もSNSを中心に激賞の嵐が巻き起こり、ファミリー層を飛び越えて全世代の支持を得た。
　いま、日本映画は何がヒットするか読めないと同時に、真摯にモノづくりに注力すれば評判が後から自動的に付いてくるという時代にもなっている。
　アニメーション界においても、次の『映画すみっコぐらしとびだす絵本とひみつのコ』が誕生しやすい前例となったはずで、この受賞を機に業界全体が盛り上がってくれることを願ってやまない。　　　（鴇田崇）

批評家コメント

　国内の多くの地方自治体に設置されているフィルムコミッション。
　映像制作者にとっての課題である撮影現場での地域との合意形成をはじめ、ロケーション・ハンティングや撮影が円滑に行われるような情報提供など、フィルムコミッションは多くの映画撮影の支援を行っている。
　近年のロケーション撮影映画に限れば、ほぼ100％エンドロールにフィルムコミッションがクレジットされていると言って良いほど、映像制作者にとって彼らの存在はすでになくてはならないものである。昨今の日本映画の活況にフィルムコミッションの存在が大きく寄与していることは間違いない。

　2009年に発足したジャパン・フィルムコミッションは、2001年に活動を開始した「全国フィルムコミッション連絡協議会」を前身としており、足掛け20年近く日本国内におけるフィルムコミッションの役割を啓蒙し続けてきた。
　現在確立されている日本のフィルムコミッションの仕組みを土台から築き上げてきてくれた彼らの活動は、今でも映像制作者と地域フィルムコミッションとの架け橋を行いながら、地域特性を活かすための仕組みづくり、コミッショナー人材の育成など、全国のフィルムコミッション活動を牽引している。
　日本映画の年間撮影本数はこの20年で倍増している（約300本から700本近くまで増加）。撮影技術の変化にも一因があるかもしれないが、この数字は確かに彼らの熱意と努力が実を結んだ賜物と言えるであろう。

　阪神・淡路大震災後の経済復興の一環から国内で導入が始まったフィルムコミッション。「映像作品を通して地元の魅力を再発見し、地元を元気にしたい」という発足当初から変わらぬその想いは、全国の映画関係者に大きく支持されているとともに、今後も新しい日本映画の名作誕生に繋がっていくであろう。
　ジャパン・フィルムコミッションのこれまでの活動は、日本映画の活性化に尽力した個人や団体を評してお贈りする「松永武賞」にまさにふさわしいものです。　　　（日本映画批評家大賞機構事務局）

批評家コメント

　ドリフのコントは本当に面白かった。
　その中でも加藤茶のキレキレのギャグが秀逸で、「加トちゃんペッ！」「ちょっとだけよォ～」「ひっきし！（くしゃみ）」などのフレーズは忘れることができない。

　加藤茶（本名・英文）は1943年に東京の世田谷区で生まれ、子供時代はギタリストであった父の故郷・福島で過ごす。
1962年「桜井輝夫とザ・ドリフターズ」にドラマーとして参加。64年には「ホイホイ・ミュージック・スクール」（NTV）等のテレビ番組に出演するようになるが、バンドは新生ドリフターズとドンキーカルテットに分裂。加藤茶はドリフに残る。

　69年から始まった「８時だヨ！全員集合」（TBS）では、メンバー全員でリハーサルを重ね、綿密にねり上げたコントが評判となり、爆発的な大ヒットとなる。とりわけ加トちゃんのてっぺんハゲ、丸メガネ、ちょびヒゲ姿からくり出されるミュージシャンならではのタイミングのいいセリフ回しが印象的で、都会人のあかぬけたセンスと、田舎の人間の愛らしさを合わせ持つ特異なキャラクターがお茶の間に定着した。加藤茶の強力なバックアップで新メンバーとなった元付き人兼居候の今は亡き志村けんの人気が高まると、自身はスッと２番手に廻るというスマートさも兼ねそなえている。

　映画は『ドリフターズですよ！』シリーズ（67～69）の５作が封切られ、加藤茶は愛嬌のあるコソ泥、ヤクザ、ギャング等に扮している。コメディーではあるがなぜかアナーキーな印象を受ける作品が多い。基本的にドリフのメンバーはソロ活動とは無縁だったが、彼だけは『てなもんや』シリーズ（66～67）やクレイジーキャッツの作品などにちょくちょく顔を出し、映画界への貢献も大きい。

　現在は大病から生還、若い奥さんをもらい自分のルーツであるバンド活動を続け、ドラマやバラエティー、ＣＭ等に精力的に出演している。
　“ちょっとだけよ”と言わず、もっともっと元気な姿を見せて、加トちゃんファンをいつまでも楽しませてもらいたい。　　　（島敏光）

批評家コメント

　1942年、東京は下町の日本橋で生まれる。父は個性派の俳優・十朱久雄。1958年、ＮＨＫ初の連続ドラマ「バス通り裏」でデビュー。東京のどこにでもありそうな家庭の、健全を絵に描いたようなお嬢さんを演じ、脚光を浴びる。翌年の59年には『惜春鳥』で映画に進出。記録に残るだけでもその年には４本、60年に３本、63年に６本、64年に8本、65年に８本、66年に５本、67年に６本……とおびただしい数の作品に登場。その大半でヒロインを演じている。
　美形でありながら、愛らしく親しみやすいという稀に見るキャラクター。演技力を構えた清純派のイメージを保ちつつ、『猟人日記』（64）のような日活のエロス路線にも顔を連ねる。

　83年には頑固な漁師と娘を置いて去って行く薄幸な妻に扮し、激しいラブシーンにも挑戦、ファンの度肝を抜いた。本人も緊張をほぐすため、撮影の直前に大量の酒を飲み、酩酊状態で撮影に臨んだというエピソードも伝わっている。
　『花いちもんめ』（85）では、ボケ老人役の千秋実の渾身の演技をまっ向から受け止め、『震える舌』（80）に次いでブルーリボン賞主演女優賞に輝く。『極道の妻たちⅡ』（87）ではうだつの上がらない組長に代わって組を仕切る気丈な妻に扮し、スゴミのある一面を披露。あらゆるジャンルの役柄に対応できる名女優として高い評価を受ける。『ハラスのいた日々』（89）、『日本一短い「母」への手紙』（95）でも円熟した演技で作品を盛り上げ、日本アカデミー賞主演女優賞優秀賞に輝くなど、現在までに20を超える大きな賞を受賞している。

　一時はケガが原因で車イス生活を余儀なくされたこともあったが、今では完全復活。テレビのバラエティー番組などでは明るいぶっちゃけキャラとして若者にも注目されている。一方では一人芝居を含む様々な舞台での活躍も目覚ましい。
　2003年に紫綬褒章、2014年には旭日小授章を受章。紛うことなき日本を代表する女優である。　　　（島敏光）

批評家コメント

　映画界における山﨑努の存在の大きさは計り知れない。
　クレジットにその名前が現れただけで、その作品は成功したも同然。麻雀に例えれば、ドラになった自分の
風牌が配牌になり、暗刻になったようなもの。満貫は必至。それほど心強い。

　山﨑努は1936 年、千葉県松戸町（現在の松戸市）で生まれる。59年に文学座に入団。翌年、東宝の青春スター
総出演のアクション映画『大学の山賊たち』の主役に抜擢され、幸先の良いデビューを飾る。
　1963年には黒澤明監督の『天国と地獄』に合格。物語のカギを握る誘拐犯を演じる。後に黒澤監督はこの役に
山﨑努を選んだ理由を「一番ふてぶてしく見えたから」と笑顔で語っている。面接でふてぶてしい態度を取れ
ば通常、その場で不合格が道理だが、黒澤監督はその奥に特別な資質を見出したのだろう。山﨑努は監督の期
待に応え、金持ちを憎悪する貧しいインターン（研修医）を鬼気迫る演技で体現。見事、これを機に一気に注
目を浴びる。以降『赤ひげ』（65）、『影武者』（80）に出演。
　一方では『お葬式』（84）、『タンポポ』（85）、『マルサの女』（87）と伊丹十三監督によるコメディー・タッ
チの作品にも連続で出演。黒澤作品とはまた違った独自の味わいを醸し出し、日本アカデミー賞主演男優賞な
ど様々な賞に輝く。さらに本場のアカデミー賞で外国語映画賞を獲得した『おくりびと』（08）ではベテランの
納棺師に扮して、作品をキリリと引き締めている。
　その目ざましい活躍ぶりは止まることを知らず、樹木希林との夢の共演を果たした『モリのいる場所』(18)、
認知症を患う厳格な父を演じた『長いお別れ』(19) と、意欲的な新作も続々と公開されている。

　シリアスからコメディー、ネガティヴとポジティヴ、根っからの善人や極悪人。どんな役にも山﨑努ならで
はの命を吹き込み、映画史にくっきりと爪あとを残している。
　その実力は「必殺仕置人」等の人気テレビシリーズやシェークスピア劇をはじめとする生の舞台でも遺憾な
く発揮されているが、やはり山﨑努には大きなスクリーンがよく似合う。
　まさに日本映画の” 至宝” である。　　　（島敏光）

第29回

作品賞

愛がなんだ

主演男優賞

主演女優賞

助演男優賞

助演女優賞

監督賞

新人男優賞(南俊子賞)

新人女優賞(小森和子賞)

新人監督賞

新人監督賞

新人監督賞

編集賞(浦岡敬一賞)

ドキュメンタリー賞

アニメーション作品賞

特別賞(松永武賞)

ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)

ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)

ダイヤモンド大賞(淀川長治賞)